The Yoga Tradition 第4部:後古典期のヨガ(Post-Classical Yoga)
第4部:後古典期のヨガ(Post-Classical Yoga)
古典期(パタンジャリ)以降、インド各地でヨガがどのように多様化・深化していったかを追う章。シヴァ信仰・ヴィシュヌ信仰・プラーナ文献・ヴェーダーンタ・シク教など多彩な流れを包括する。
第1章:The Nondualist Approach — Shiva Worshipers(シヴァ派の不二一元論的ヨガ)
カシュミール・シャイヴィズム(8〜13世紀)
- 最も哲学的に洗練されたシヴァ崇拝の体系。
- プラティヤビジュニャー(再認識)派:アビナヴァグプタが大成。現象世界はシヴァの自己顕現であり、それを「再認識」することが解脱。
- スパンダ(振動)派:宇宙はシヴァの意識の振動から成ると説く。
- クラ(Kula)派:シャクティ(女神・エネルギー)を中心に据えた急進的な密教的体系。
シャクティズム(女神崇拝)
- シャクティ(宇宙的エネルギー・女神)をシヴァと並ぶ究極原理として崇める。
- クンダリニー・シャクティの覚醒がヨガの中心実践となる。
- 主要テキスト:タントラ・アーガマ・デーヴィー・マーハートミヤ。
主要実践:マントラ・マンダラ・ムドラー・ニャーサ(神格の身体への配置)・クンダリニー覚醒。
第2章:The Vedantic Approach — Vishnu Worshipers(ヴィシュヌ派のヴェーダーンタ的ヨガ)
バクティ(献身)ヨガの発展
- 南インドのアールヴァール聖者(6〜9世紀):ヴィシュヌへの情熱的な献身詩。
- ラーマーヌジャ(11〜12世紀):ヴィシシュターダヴァイタ(限定的不二一元論)。神への愛が解脱の道。
- マドヴァ(13世紀):ドヴァイタ(二元論)。神と魂は永遠に別個。
ヴァイシュナヴィズムとヨガの融合
- ヴィシュヌ・プラーナ・バーガヴァタ・プラーナでバクティ・ヨーガが詳説される。
- クリシュナ崇拝:ラーダーとクリシュナの神聖な愛を霊的合一の象徴とする。
第3章:Yoga and Yogins in the Puranas(プラーナ文献のヨガ)
- プラーナ(「古い話」)は膨大な物語・神話・教義を収録する百科全書的文献群(5〜15世紀頃)。
- 18の主要プラーナにヨガへの言及が散在。
- バーガヴァタ・プラーナ:バクティ・ヨーガの最高の文学的表現。クリシュナの生涯と愛の神学。
- ヴィシュヌ・プラーナ:ヨガの実践とヴィシュヌへの帰依を結びつける。
- リンガ・プラーナ:シヴァヨーガの詳細な実践指針。
- プラーナはヨガの大衆化・普及化において重要な役割を果たした。
第4章:The Yogic Idealism of the Yoga-Vasishtha(ヨーガ・ヴァーシシュタの唯心論)
- 成立:6〜14世紀頃。作者不明。約29,000詩節からなる膨大な哲学的物語詩。
- 核心思想:この世界は意識(チッタ)の投影にすぎない。夢と現実に本質的な差はない。
- ラーマとヴァーシシュタ:王子ラーマと賢者ヴァーシシュタの対話形式。
- 解脱の道:世界の夢的性質を洞察し、執着を断つことで意識は本来の自由を取り戻す。
- Feuerstein は本書を「ヨガ哲学の最大の文学的達成の一つ」と高く評価する。
第5章:God, Visions, and Power: the Yoga-Upanishads(ヨーガ・ウパニシャッド)
- 後期ウパニシャッド(7〜15世紀頃)の一群で、ヨガの技法を専門的に扱う約20の文書群。
- 主要なもの:ダルシャナ・ウパニシャッド・ヨガ・シカー・ウパニシャッド・テージョビンドゥ・ウパニシャッドなど。
- 特徴:チャクラ・クンダリニー・ナーディー・プラーナーヤーマの詳細な技術的記述。
- ハタ・ヨーガとラージャ・ヨーガを統合しようとする試みが顕著。
- Feuerstein はこれらを「ヨガ技法の百科全書」として位置づける。
第6章:Yoga in Sikhism(シク教のヨガ)
- シク教(15世紀末、グル・ナーナクにより創始)はヒンドゥー教とイスラム教の融合から生まれた一神教的伝統。
- ナーム・ジャパ(神の名の反復):マントラ実践と共通するヨガ的技法。
- シャバド(Shabad)ヨーガ:聖典の言葉・音への瞑想。
- サハジャ(Sahaja)の概念:自然で努力なき状態。ハタ・ヨーガのような身体操作ではなく、神への純粋な帰依によって達成される。
- グル・グラント・サーヒブ:シク教聖典にはナート派のハタ・ヨーガ用語が批判的に言及される一方、内的ヨガの価値が称揚される。
- Feuerstein はシク教をヨガ的精神性の最後の大きな「開花」の一つとして位置づける。