ハタ・ヨーガ・プラディーピカー 第4章:サマーディ(Samadhi)
ハタ・ヨーガ・プラディーピカー 第4章:サマーディ(Samadhi)全114詩節
ハタ・ヨーガ全実践の到達点を論じる最終章。ラージャ・ヨーガ(サマーディ)とハタ・ヨーガの統合を説き、解脱の本質を明かす。
ハタ・ヨーガとラージャ・ヨーガの統合
- 「ハタ・ヨーガなきラージャ・ヨーガなく、ラージャ・ヨーガなきハタ・ヨーガなし」
- ハタ・ヨーガは身体と呼吸を整える外的準備。ラージャ・ヨーガは心を整える内的実践。両者は一体。
- 本章はシヴァによるラージャ・ヨーガ・マナス(心のヨーガ)の教えとして提示される。
サマーディの定義と種類
サマーディの同義語 スワートマーラーマは多くの言葉でサマーディを表現する。
- ラージャ・ヨーガ / サマーディ / ウンマニー / マノンマニー
- アマラトヴァ(不死)/ リヤ(溶解)/ タットヴァ(真実)
- シュゥニャ(空)/ パラマ・パダ(最高の境地)
- アマナスカ(心なき状態)/ アドヴァイタ(不二)/ ニラーランバ(支えなき状態)
これら全ての言葉が同一の究極状態を指す。
シャンボヴィー・ムドラー(Shambhavi Mudra)
- 眉間(アージュニャー・チャクラ)に心を固定し、目を半開きにしながら内側を見る技法。
- 「外側には何も見ず、内側にも何も見ない」状態。
- シヴァの秘法として最も重要なムドラーの一つ。
- ヴェーダ・シャーストラ(聖典)に勝る価値を持つとされる。
ウンマニー(Unmani)と心の溶解
- ウンマニー:心が対象への向かい合いを超えた状態。「心なき心」。
- ラヤ(溶解):心が個別の対象への執着から解放され、宇宙意識に溶け込む状態。
- 「心がラヤする時、それがサマーディである」
心の溶解を促す方法
- ナーダ(内なる音)への集中
- シャンボヴィー・ムドラー
- ケーチャリー・ムドラー
- ヨーニ・ムドラー(耳・目・鼻・口を指で塞ぐ)
ナーダ・アヌサンダーナ(Nada Anusandhana)内なる音の探求
第4章の中心的実践。心を内なる音(アナーハタ・ナーダ)に集中させることでサマーディに至る道。
ナーダとは何か
- アナーハタ(打たれていない音):二つの物が触れ合わずに自然に生じる内なる音。
- 意識の奥底で常に鳴り響く宇宙の根本音。
- 初心者には聞こえにくいが、実践とともに明瞭になる。
ナーダの四段階
- アーランバ(初期):粗大な音。太鼓・海・雷のような音。
- ガタ(中期):より微細な音。鐘・ホルア貝・角笛のような音。
- パリチャヤ(熟練期):さらに微細な音。ヴィーナー(琵琶様の楽器)・フルート・ハチのような音。
- ニシュパッティ(完成期):極めて微細な音。天上の音・雷のような微細な振動。
ナーダへの集中の効果
- 「蛇がフルートの音に魅了されるように、心はナーダに魅了され、内側に入っていく」
- 外界の対象への関心が自然に失われ、心がナーダに融合する。
- 最終的にナーダ自体も消え去り、純粋な意識(シャンタ・ブラフマン)だけが残る。
サマーディの徴候と境地
サマーディに近づく徴候
- 身体に電流のような感覚
- 感覚器官の対象への無関心
- 時間の感覚の消失
- 身体の重さ・軽さの交互の感覚
サマーディの境地
- 「ヨーギーはサマーディにある時、寒さも暑さも感じず、苦も楽も知らず、名誉も不名誉も知らない」
- 「眠らず、目覚めず、夢見ず、プラーナが動かず、心が動かず、身体が石のようになる」
- ジーヴァン・ムクタ(生きながら解脱した者):身体を持ちながら完全な解脱状態にある者。
マノンマニー(Manonmani)の達成
- マノンマニー:心が対象なき状態に完全に留まること。
- プラーナが制御され、心がラヤ(溶解)した時に自然に現れる。
- 「プラーナとマナス(心)が溶解する時、至福の光が生まれる」
結語:ハタ・ヨーガの究極の目的
スワートマーラーマは最終詩節で全ての実践の目的をまとめる。
- アーサナ・プラーナーヤーマ・ムドラー・バンダ・ナーダの全実践は、ただラージャ・ヨーガ(サマーディ)の一点に向かうための手段である。
- サマーディにあっては、カルマの積み重ねも消え、過去・現在・未来の全てが意識の光の中に溶解する。
- これが**ムクティ(解脱)**であり、ハタ・ヨーガ・プラディーピカー全体が導く最終目標である。