Light on Yoga ① 序文・哲学的背景
Light on Yoga ① 序文・哲学的背景
B.K.S.アイアンガー著『Light on Yoga』(1966年)の序文と哲学的背景。アイアンガー自身の修行歴と、ヨガの本質・八支則の概説を収録。
アイアンガーとクリシュナマチャリヤ
- B.K.S.アイアンガー(1918〜2014)はインド・カルナータカ州生まれ。
- 15歳の時、義兄であり師であるT.クリシュナマチャリヤ(1888〜1989)のもとでヨガを学ぶ。
- クリシュナマチャリヤはインド近代ヨガの父とも呼ばれ、パッタビ・ジョイス(アシュタンガ・ヨガ)・デシカチャー(ヴィニ・ヨガ)らも輩出した。
- アイアンガーは病弱な少年時代を経て、ヨガによって健康を取り戻した自らの体験から、身体的精度(アライメント)を重視する独自のスタイルを確立。
- 1952年、ヴァイオリニストのイェフディ・メニューインとの出会いをきっかけに西洋に紹介され、国際的名声を得た。
本書の意義
- 1966年の初版刊行以来、世界中で「ヨガのバイブル」として使用される。
- 200以上のアーサナを写真付きで体系化した最初の包括的な実践書。
- 単なるポーズ集ではなく、ヨガの哲学・倫理・実践を統合した総合書として位置づけられる。
- アイアンガー自身が全てのアーサナのモデルを務めた写真が特徴。
ヨガの哲学的背景
ヨガの定義
- サンスクリット語の語根「ユジュ(yuj)」から。「結合・統一」の意。
- 個我(ジーヴァートマン)と宇宙意識(パラマートマン)の合一。
- 心・身体・魂の調和的発展。
アイアンガーのヨガ観
- ヨガは宗教ではなく、普遍的な精神的・身体的訓練。
- 「ヨガは人種・年齢・信条・性別・宗教を問わず、全ての人のためにある」
- アーサナは単なる体操ではなく、意識を精妙化するための精神的実践。
- プロップス(補助道具:ブロック・ベルト・毛布など)の使用で、全ての人がアーサナの恩恵を受けられる。
八支則(アシュターンガ)の概説
パタンジャリのヨーガ・スートラに基づく八段階の実践体系をアイアンガーは詳しく解説する。
1. ヤマ(Yama)社会的倫理・禁戒
- アヒンサー(非暴力):思考・言葉・行為において傷つけない。
- サティヤ(誠実):真実を語り、虚偽を避ける。
- アステーヤ(不盗):盗まない。他者の物・時間・功績を奪わない。
- ブラフマチャリヤ(純潔):エネルギーの保持と精神的純潔。
- アパリグラハ(不貪):必要以上に所有しない。
2. ニヤマ(Niyama)個人的規律・勧戒
- シャウチャ(清浄):身体と心の清潔さ。
- サントーシャ(知足):現状への満足と感謝。
- タパス(熱意):継続的な努力と自己鍛錬。
- スヴァーディヤーヤ(自己研鑽):聖典の学習と自己観察。
- イーシュヴァラ・プラニダーナ(神への帰依):エゴを超えた奉献。
3. アーサナ(Asana)体位法
- 安定して快適な姿勢。身体の全細胞に意識を行き渡らせる実践。
- アイアンガーは「アーサナは瞑想のための門」と位置づける。
4. プラーナーヤーマ(Pranayama)呼吸法
- 生命エネルギーの制御。呼吸の意識的な調整。
- アーサナに熟達した後に実践する。
5. プラティヤーハーラ(Pratyahara)感覚の制御
- 感覚を外界から内側へ引き戻す。
- アーサナとプラーナーヤーマの実践で自然に培われる。
6. ダーラナー(Dharana)集中
- 心を一点に固定する。
7. ディヤーナ(Dhyana)瞑想
- 集中の継続的な流れ。
8. サマーディ(Samadhi)三昧
- 個我と宇宙意識の完全な合一。ヨガの究極目標。
アイアンガーの視点:外側の三支則(ヤマ・ニヤマ・アーサナ)は身体と行動の変容、中間の二支則(プラーナーヤーマ・プラティヤーハーラ)は呼吸と感覚の変容、内側の三支則(ダーラナー・ディヤーナ・サマーディ)は心と意識の変容を担う。これらは段階的ではなく、同時並行的に深化する。