ゲーランダ・サンヒター:七部門のハタ・ヨーガ
ゲーランダ・サンヒター:七部門のハタ・ヨーガ
17世紀末〜18世紀初頭成立。聖者ゲーランダと弟子チャンダカパーリの対話形式で説かれるハタ・ヨーガの重要古典。ハタ・ヨーガ・プラディーピカーと並ぶ主要テキスト。
著者・成立背景
- 著者ゲーランダについての詳細は不明。
- 成立年代:17世紀末〜18世紀初頭頃。
- ハタ・ヨーガ・プラディーピカー(15世紀)より後発だが独自の体系を持つ。
- ヴィシュヌ派的背景が強い(ハタ・ヨーガ・プラディーピカーはシヴァ派的)。
七部門の構成(サプタ・サーダナ)
ゲーランダは身体を「土の壺(ガタ)」に喩え、7段階の実践で完成させる。
第1部門:シャットカルマ(六種の浄化法)
ハタ・ヨーガ・プラディーピカーと同じ6種だが、より詳細に説明。
- ダウティ(消化管の洗浄):4種類に細分(アンタラ・ダウティ・ダンタ・ダウティ・フリット・ダウティ・ムーラ・ショーダナ)。
- バスティ(大腸の浄化)
- ネーティ(鼻腔の洗浄)
- ラウキカ(腹部回転)
- トラーターカ(凝視)
- カパーラバーティ(頭蓋輝化)
特徴:身体を「土の壺を焼き固める」ように浄化する。
第2部門:アーサナ(座法)32種
ハタ・ヨーガ・プラディーピカーより多くのアーサナを収録。
主要アーサナ:シッダーサナ・パドマーサナ・ビーラーサナ・マハームドラー・グプターサナ・ガルダーサナ・ヴリシャーサナ・シャラバーサナ・マコラーサナ・ウシュトラーサナ・ブジャンガーサナ・ヨガーサナなど。
第3部門:ムドラー(印契)25種
ハタ・ヨーガ・プラディーピカーの10種より多い25種を収録。
主要ムドラー(ハタ・ヨーガ・プラディーピカーにない独自のもの)
- ナボー・ムドラー:舌を上顎に向ける
- カーキー・ムドラー:カラスのくちばしのように口をすぼめて吸気
- マタンギー・ムドラー:水中での特殊な実践
- バフジャンギニー・ムドラー:首を前後に動かす
第4部門:プラティヤーハーラ(感覚の制御)
パタンジャリの八支則の第5支則を実践的に詳述。
- 5種の方法:ヴィジャヤー・ムドラー・チッタ・サクシーン・アンガ・サマーダーナなど。
- 「心が外に向かう時、感覚はその後に続く。心が制御されれば感覚は自動的に制御される」
第5部門:プラーナーヤーマ(呼吸法)
8種のクンバカを詳述。ハタ・ヨーガ・プラディーピカーと重複するが独自の記述も多い。
サヒタ・クンバカ(意図的な保息)の詳細な比率:
- 吸気:保息:呼気=1:4:2が基本比率。
- 段階的に延長していく。
第6部門:ディヤーナ(瞑想)3種類
- スタゥラ・ディヤーナ(粗大な対象への瞑想):神像・光・マントラへの集中。
- ジョーティ・ディヤーナ(光への瞑想):心臓の火の光・眉間の光への集中。
- スークシュマ・ディヤーナ(微細な対象への瞑想):クンダリニー・シャクティへの瞑想。
第7部門:サマーディ(三昧)6種類
- ディヤーナ・ヨーガ・サマーディ
- ナーダ・ヨーガ・サマーディ
- ラサーナンダ・ヨーガ・サマーディ
- ラヤ・シッダ・ヨーガ・サマーディ
- バクティ・ヨーガ・サマーディ
- ラージャ・ヨーガ・サマーディ
ゲーランダ・サンヒターの特徴と意義
ハタ・ヨーガ・プラディーピカーとの比較
| 項目 | ゲーランダ・サンヒター | ハタ・ヨーガ・プラディーピカー |
|---|---|---|
| 構成 | 7部門 | 4章 |
| アーサナ数 | 32 | 15 |
| ムドラー数 | 25 | 10 |
| 宗派的背景 | ヴィシュヌ派的 | シヴァ派的 |
| プラティヤーハーラ | 独立した部門として扱う | 扱わない |
| 特色 | より実践的・詳細 | より哲学的・詩的 |
歴史的意義:七部門の体系はパタンジャリの八支則とも異なる独自の実践体系として、ハタ・ヨーガの多様性を示す重要文献。